昔ながらの“差し歯”はしないでくれ! June 2017

まず父の日おめでとうございます。

すぐに本題にいきますが、何なのこの題は?と思われるかもしれません。差し歯という名称はだいたいの日本人の方は知っていて使われているかと思います。しかし、だいたいの方は詳しくは何の事なのかは解っておられないようでもあります。もちろん、解っている方もおられるはずですが、もう少しはっきり言うと、昔から日本でされている差し歯と呼ばれているものは私からすれば、出来ればして欲しくない治療です。前に日本とアメリカの歯科治療の違いについて2度記事を書いているので、宜しければ、当医院のホームページで読んでください。質と量と需要と供給(January 2008)と、2人のおじさんと両親(October 2015)です(私ごとですが、このOctober 2015の記事後、去年父は他界しています)。では、今回はこの差し歯についてなぜ私がこう考えるかについて書きます。題としては面白いので、使いましたが、実際は強い感情があるわけではありません。

まず、“差し歯”とは何なのか? 差し歯というのは歯根が残っているが歯茎の上の歯の部分が無いか大部分無い場合、歯根に心棒になるものを“さして、”それに歯の形のものが繋がっているものです。“差す”という漢字自体実際は“つける”とか“つぎ足す”という風にとるべきなのですが、刺して入れるという風にとれてしまうので、私としてはこの名前自体好きではありません。しかも、たまに患者さんに歯が無い場合はそこには“差し歯”をするのかと聞かれるのですが、歯根が残っている場合のみの治療です。歯が無い場合は骨に埋めるインプラントが出来、インプラントは差し歯ではありません。そして、“差し歯”をするためには、歯根内の歯髄を取り除いて根管治療をしている必要性があります。もちろん、日本で今でもされている昔ながらの“差し歯”と似ているが新しいもっと良い治療法があります。古い方法では心棒と歯の形のものが一体になっています。新しい方法では根管治療が必要であればそれをし、そこからが少し変わります。心棒になる支柱を歯根に入れ、その周りに支台にするための詰め物をします。そして、その上にクラウン(冠)を作ってつけます。たいして違いが無いではないかと思われるかもしれませんが、大きな違いになり得てしまうのです。一応、この新しい方法(実際は50年ぐらい前からされているので、新しくは無いです)での治療もおおまかには“差し歯”と呼ばれていますが、実際はクラウンでの治療なのです。

でも、なぜ先生は“差し歯”を嫌うのかと思われるでしょう。これは治療でする心棒の部分にとても関係します。歯根は頑丈なものではありません。しかし、もし大部分歯茎の上の歯が無ければ、歯根に心棒を入れて、支えにするという事は物理的に理が通っています。そして、ここからが良い歯医者としてはとても大事な事柄になります。この心棒には適した長さと太さがあります。物理的に歯根内で長い方が良く、実際は上につく歯の部分の高さ以上にするべきで、しかも太さは歯根の直径の3分の1以下までの直径でないと歯根が割れてしまう可能性がとても大きくなってしまうのです。歯根の直径は太くても1cmぐらいです。つまりこの心棒は細く長くしたいわけで、逆に太く短くでは治療としては良くありません。昔ながらの“差し歯”の治療はする際に心棒をいれる歯根内に穴を開けてそこの型をとり、その型から心棒とそれに繋げた歯の形のものをつくります。しかし、大きな穴でしかも浅い穴であれば型がとりやすいわけで、細く長い穴は型がとりにくくなります。新しい方の方法であれば、型をとるのではなく、最初から存在している心棒を歯根内にそのまま接着して、その上に支台になるものを詰めて形を整えられます。そしてそこから歯の上の部分に被せるクラウンの型をとり歯の形のものを作ります。もちろん“差し歯”方法の方でも細く長い心棒にすることは可能ではあるのですが、現実には、難しいのでそうはなっていません。私は今までにたくさんの日本でされた“差し歯"を診ていますが、心棒の部分が太すぎたり、短すぎたりがありすぎます。太すぎると歯根が割れてしまう恐れがあり、そして短かすぎると支えになっていないので、つけてあるものが取れやすくなります。

しかも、もうひとつ困った事があります。日本でされた場合、根管治療が不完全な事が多くあります。これは、日本の保険制度内の費用でする際、これぐらいの不完全のものぐらいまでしか時間をとって出来ないからと簡単に言えてしまいます。しかも、私はずいぶん昔にあるアメリカでの学会で、日本では根管治療をする際、完全に歯髄をとらないで、不完全にしておくことが普通と考えられていると聞いた事さえもあります。つまり、日本とアメリカでは歯の治療に対する歯医者の考え方が違うという事なのですが、私としては、不完全な治療でしかもその歯がとても化膿しているという歯をたくさん診てしまっていて、たんに理屈をつけているだけに思えてしまいます。もちろん、日本でも良い根管治療はされていますし、アメリカでも変な治療はあり得るので、日本はこうで、アメリカはこうだと簡単に言うべきではありません。

しかし、もし日本でされた“差し歯”がそれと共にその歯の根幹治療が悪くて歯根先が化膿してしまっていると、そのままにはしておけません。いつかはこの化膿が大きくなりすぎてしまい、痛みと腫れが起こり、歯は抜くしかなくなってしまいます。再治療はするべきなのですが、通常一度変に治されている歯は治療は難しくなります。特に“差し歯”の心棒が変に太すぎるとこれを取り除く事だけにもとても気をつかいます。でも、再治療は出来ます。私はとても優れた根管治療のスぺシャリストの方に患者さんには行っていただいています。そして、その後、私がクラウン治療をしています。

私はたまに何でいつまでたっても日本ではこの昔ながらの“差し歯”治療をしているのだと思ってしまいます。もちろん、こちらの方が簡単というか、きちんとしなければ簡単なわけで、またこの方法はもしかすると主流の方法として日本では教えられているのかもしれません。保険制度の中でもこの方法が一番金銭的には歯医者への支払いは良いのかもしれません。また、単に昔ながらのものというのは長い間変わらないからなのかもしれません。普通、患者さんには歯の治療の良さ悪さは解らないのですが、治療の詳細は少しでも解っている事は良いと思います。

もちろん、いつも書いていますが、一番大事な事は予防ですので、毎日の歯磨きとフロスを良くして、歯医者さんでの定期的な検診とクリーニングも是非してください。検診、クリーニング、そして良い治療のためにはお電話下さい。

 

 

 

 
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