アドレナリン! July 2019

アドレナリンとは何かと聞かれたら、だいたいの方はスポーツの試合時、何かしらのプレゼンを大勢の人の前でする時、またはローラーコースターに乗った時などに体が分泌するホルモンだと解っておられると思います。よくスリルがある時や緊急時などに戦うか逃げるかという事を補うホルモンと説明されます。実はこのアドレナリンは歯科治療の時に使う局部麻酔の大部分に微量に入れてあります。アドレナリンは麻酔の効果を上げ、安全性も高めるからです。えっ?どういう事なの?と思われるかもしれません。また、一部の患者さんは歯医者さんで麻酔をした際、数分心臓がどきどきしたという経験があるかと思います。たまにしか起きず、起こったとしても数分で無くなる症状なのですが、そういう方にとっては何が起こっているか把握していれば安心感に繋がると思います。従って、今回は歯科局部麻酔に入っているアドレナリンについて書きます。

アドレナリンは私たちが何かしらのストレスを感じた時、つまり危険だろうと感じた時に体が戦うか逃げるかを良く出来るようにするホルモンだと考えれば、具体的なアドレナリンの体への影響がわかります。まず、筋肉が良く働けるようにします。そのために、肺から酸素を良く吸収出来るようにし、心臓の鼓動を上げ、筋肉に酸素が多く届くようにします。この事は血圧も上げます。そして、筋肉と関係ない箇所の血管は縮小させ、やはり筋肉に優先的に酸素を送ります。また、血糖値も上げ、糖分も筋肉に多く行くようにします。しかも、脳も活性化させ、すばやく考えられるようにします。つまり、緊急時により良く戦う、または逃げるという事ができるようにするのです。例えば、火事場の底力はアドレナリンが補っているのです。

歯科局部麻酔と何も関連性が無いようですが、ところがどっこい、アドレナリンの血管を縮小させる効力が麻酔をとても優れたものにしてくれているのです。局部麻酔自身は神経をしびらせて、麻酔が効いている箇所を何も感じなくさせる薬です。この薬に微量のアドレナリンを加えると、麻酔はこの薬を打ったところだけに長く残ってくれるのです。つまり、麻酔を注入した箇所の血管がすぐ縮小するので、麻酔は体中には回っていけず、ある一定の個所だけに溜まってとどまるのです。この事は一か所に麻酔が効いている時間を長くし、また効力も上げます。もちろん、血管が縮んでいても少しは麻酔は体中に循環して行きます。しかし、とても少なく、のろのろと伝わっていくので、他の体の部分には効力が無いのです。これが、逆にアドレナリンを麻酔に入れていないと、麻酔は打ったところに効いてはくれるのですが、すぐに効果が無くなり、また体全体に早く回っていってしまうので体への負担が大きくなるのです。麻酔薬にはいろいろな種類や使い方があるので、簡単にこれだけの時間は効いているとは言えませんが、ざっと言えばアドレナリン無しの麻酔は30分ぐらいで、アドレナリン入りの麻酔は1時間、3時間、もしくは6時間は効きます。

もちろん、アドレナリン入りの麻酔が私たちの体に何も影響を与えないわけではありません。ある研究のデータを紹介します。1997年にドイツでいろいろな患者さん2731人にアドレナリン入りの麻酔を使い歯科治療をした際、何かしら体に影響があれば、それを記録した調査があります。この調査では95.5%の方たちには何も問題がありませんでした。残りの4.5%の方には心臓がどきどきする、またそれに伴ってボーっとした、体が震えた、気持ち悪くなったという事が度合いは違いましたが、診られました。ただ、これらの反応はすべて数分で無くなりました。2人発作を起こした方がおられたのですが、この2人は心臓病であったのと麻酔へのアレルギーがあったという事でした。つまり、だいたいの方には問題がないのです、 もちろん少人数の方には心臓がどきどきするという事が起こるのも確かです。しかし、安全性はとても高いもので、実際は心臓の悪い方でもアドレナリン入りの麻酔は量は限られていますが、使って良いとされています。もちろん、心臓病、また高血圧の方であれば、かかりつけの医師と相談し承諾を受けてから歯科治療をする事をします。また、安全性に関係する事柄の一つに妊婦さんの歯科治療があります。The American Congress of Obstetricians and GynecologistsとThe American Academy of Pediatriciansは妊婦さんが歯科治療をする事を強く勧めています。これは、お母さんの口内の健康が赤ちゃんの健康に関係するからで、しかもアドレナリン入りの麻酔での治療に安全性があるからです。普通はするのであれば妊娠4か月から6か月あたりにするべきものです。

しかし、麻酔により、心臓がどきどきするという事はあり得る事です。むずかしいところが、患者さんにとって歯医者さんでの治療が怖い場合、自分でもアドレナリンを分泌していて、それに加えて麻酔からのアドレナリンの作用があるという事も考えられます。また、ドキドキするという症状自身が恐怖心を促す可能性もあります。ただ、麻酔のアドレナリンのこの症状は数分で無くなります。ドキドキするという事をお伝えいただければ、急がずに心臓の動機がおさまるのを待ちます。少しの間、設置してあるテレビを見たり、ただ瞑想するなどしていただければ、体の状態は普通になります。

アドレナリンは歯科局部麻酔をとても優れたものにしています。もちろん、何もかもバラ色などという事は無いのですが、麻酔による心臓の動機はあったとしてもまれに起こるもので、しかも数分でおさまるものです。何が起こっているのか解っている事は安心感にも繋がります。この心臓の動機が以前あって、そのせいで歯医者に行くのが怖いという方もおられるかもしれませんが、この記事を読んで何が起こっているのかが解って気をたてなおして健康のために歯医者に行こうと思われる方がおられれば、それはとても光栄です。もちろん、皆さん、一番大事な事は予防です。毎日の歯磨きとフロスを良くして、歯医者さんでの定期検診とクリーニングもして下さい。定期検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。

 

 

 

 

 
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