ダークサイドへいってしまう口内の細菌たち　July 2016

みなさん暑い中いかがお過ごしでしょうか。映画スターウォーズの中でダークサイドは悪のサイドです。スターウォーズに興味が無い方もおられるかと思うので、一応ダークサイドは悪のサイド(暗黒面)だと解っていれば今回のニュースレターは読めます。口内の細菌については解っている事とまだ解っていない事がいろいろあります。その中で最近はっきりしてきた困った事柄があります。今回はこの口内で悪に染まってしまう菌たちについて書きます。

前にも書いていますが、口内にはいろいろな種類の細菌たちが住んでいます。この細菌たちは町、もしくは国、のようになって、一緒に歯にくっ付いているバイオフィルムという世界にいます。この中には歯茎に悪い細菌、虫歯にする細菌、また何もしない細菌といろいろな細菌が共同生活をしています。そして歯茎に悪い細菌が歯と歯茎の間に住み込んでしまうと、歯槽膿漏になってしまいます。しかしここにもっと困った事が最近発見されてしまいました。今までバイオフィルムの中では細菌たちは自らいろいろな化学物質を出して他の細菌たちとコミュニケーションをとっているという事は知られていました。 ところが、この中で歯槽膿漏にする悪い細菌と解っているP. gingivalisという細菌はその周りにいる違う種類の細菌たちを皆歯茎に悪い事をするように変えている事が解ったのです。P. gingivalisは歯茎を破壊する物質を作り、そして私たちの体が炎症を起こしてこのばい菌を退治する事から自分を守る物質さえも作ります。最近歯槽膿漏になっている歯茎にいる細菌たちの種類とその細菌たちが何をしているかを染色体を通して視る事ができるようになりました。P. gingivalisが何をしているかは予想通りだったのですが、予想外に周りにいる何も害を起こすはずのないバクテリアたちもP. gingivalisといっしょに歯茎を破壊する物質を作っている事が判明されたのです。つまり、P. gingivalisは周りにいる他の害を起こさないはずの細菌たちの染色体を変え、害をおこすようにしているのです。しかも、もっと恐ろしい事にP. gingivalisの数が少なくても、周りの他種類の細菌たちを歯茎に害を与えるものに変えられることさえも判明しました。ところが、P. gingivalisが口内にいても他のバクテリアに何も変化がない場合もある事も判明しています。今のところ何がP. gingivalisを他の種類の細菌を変化するようにさせるのかは解っていません。しかしこれはスターウォーズ内の話のように最初は良い人だった者がダークサイドに魅せられて、悪に染まってしまう事と同じです。しかも、P. gingivalisは私たちの歯茎の細胞の中に入って住み着く事が出来、従って退治するのが簡単ではないばい菌なのです。

おいおいそれではダークサイド、つまり悪の方がめちゃくちゃ有利で勝ってしまい歯槽膿漏になってしまったら歯茎破壊の道しかないではないかと考えられます。もちろんそんな事はありません。まだはっきりとはしていないのですが、P. gingivalisに変えられてしまう細菌とそうでない細菌がいる可能性があります。そして一番大事な歯槽膿漏予防がやはり今まで知られていてされている予防方法です。バイオフィルムの世界を壊して取り除けば、その中のいろいろなばい菌はいっしょに取り除けられます。つまり全てのばい菌の量を少なくすれば、P. gingivalisが悪に導きたくても導かれるばい菌は少ないわけです。そして、バイオフィルムを取り除いてからはまたそれが町や国にまで広がるには時間がかかります。従って、毎日歯磨きとフロスでバイオフィルムを朝晩と2回取り除く事はとても理に通っています。そして定期的に歯医者さんでクリーニングをする事によって、より良くバイオフィルムを取り除く事ができます。個人差はありますが、普通には6ヶ月ごとに、そして歯槽膿漏になった事がある方は3ヶ月ごとには歯医者さんでクリーニングをしていただきたいです。これらの事はどのようにばい菌たちがバイオフィルムをつくり中に住み込んでいくかの時間帯に合わせています。歯に付いている、そして歯と歯茎の間にいるバクテリアの量を常に物理的に取り除き減らす事は歯槽膿漏、そして虫歯の予防の基礎です。

また、私たちの体のいろいろな箇所は実際は関係し合っています。体の一部が悪ければそれは体全体に害を与えます。以前書いていますが、口内のバクテリア、そして歯槽膿漏で歯茎の炎症をさせる炎症物質は血流を通して体中に回ります。そして身体のいろいろな他の病気に関連します。従って、本当に体の健康管理の大切な一部として歯と歯茎を大事にしてください。検診、クリーニング、そして治療のためにはお電話下さい。