歯根の虫歯   October 2013

歳をとっていくといろいろ体に変化が見えてきます。人によって差はありますが、歯茎も同じで歳と共に少しずつ歯茎は下がっていきます。歯の根の部分は20代までは だいたい歯茎に覆われているのですが、平均して診ると30代半ばあたりからは歯根の部分がじょじょに露出されていきます。確かに歯茎の健康状態、毎日の手入れの良し悪し、遺伝などで違いはありますが、長く使っている間に体が例えば50代の時に20代の時と同じという事はあり得ません。しかし歯根は虫歯になりやすいところでもあります。そこで今回は歯根の虫歯(根面う蝕)について書かせていただきます。

歯の根の上にある歯冠の部分を覆っているエナメル質はとても硬く、85%はハイドロキシアパタイトというもので出来ています。このハイドロキシアパタイトは主にカルシウムとリンで出来ていて、つまりエナメル質を硬くしている物質です。しかし歯根はエナメル質で覆われていません。歯根はセメント質という成分で薄く覆われていてこのセメント質は歯茎や骨と歯根を繋げる役目をしています。このエナメル質とセメント質の中に象牙質がありその中に歯髄があります。そしてセメント質と象牙質の中のハイドロキシアパタイトの量は47%とエナメル質の半分に近い量です。つまり歯根はエナメル質よりもとても軟らかく、酸をつけるとエナメル質よりも2倍に近い速さで溶けてしまいます。

しかもエナメル質内の3%はタンパク質と脂質なのに比べ、セメント質と象牙質内の33%はタンパク質と脂質です。ハイドロキシアパタイトは酸が溶かすのですが、タンパク質は酸が無くても虫歯のバイ菌が持っている酵素が分解します。つまり、歯根は虫歯のバイ菌にとってはエナメル質のある歯冠と比べ、とても穴を開けやすく、ダメージを広げやすいところなのです。もちろん歯冠の部分も2~3mmあるエナメル質の中の象牙質に虫歯が穴を開けて届いてしまうと同じ様にダメージを広げます。

しかも、歯冠と歯根の境目には虫歯のバイ菌が無くてもくさび状欠損というものになり得ます。詳しくはホームページ内のくさび状欠損 March 2008を是非お読み下さい。毎日噛む際に私たちは歯に上下だけでなく横にも力を加えます。この際歯はちょうど歯冠と歯根の境目あたりで少しゆがみます。針金を何回も同じ部分を曲げるようなもので、このゆがみが重なるとその部分が弱まり簡単に崩れてしまうと言う事が起こります。このように崩れて穴が空いてしまう事をくさび状欠損と呼びます。このくさび状欠損も何年も歯を使っていると見えてくるものです。従って歯茎が下がり歯根が出てくるとこの場所はとても穴が空きやすいところなのです。

歯根の虫歯の治療は他の虫歯と同じように虫歯を取りそこに詰め物をする事になります。もちろんあまりにも大きな穴の場合は治すのに神経を取らないといけない、またひどいとそのまま歯が崩れてしまう事もあります。やはり大きくなる前に虫歯は治していただきたいものです。

予防も他の虫歯と同じなのですが、気をつけていただきたい点がいくつかあります。虫歯のバイキンが歯と歯茎の間あたりにたくさんくっ付いてそのままにならないように歯磨きはとても大事です。しかし歯根は軟らかいので歯ブラシは必ずソフトかエクストラソフトのものを使って下さい。また大きく横に歯ブラシを動かして磨く事はしないで下さい。大きく横に歯ブラシを動かすと力が加わりすぎ、ソフトな歯ブラシでも歯根を削ってしまいます。電動歯ブラシも良いのですが、これも電動歯ブラシに磨かせるという気持ちで自分でもごしごしと電動歯ブラシを動かす事はしないで下さい。どの歯ブラシでも歯におしつけるのではなくかるい圧力で磨くようにして下さい。歯を磨く主な理由は歯の表面についたやわらかい歯垢をとる事ですので、大きな力を使う必要はありません。実際は上記の歯磨きの方法は誰もにしていただきたいものなのですが、特に歯根が見えてきている方には気をつけていただきたいところです。

そして、もうひとつ予防に出来る事があります。フッ素は歯を硬くしてくれるものなのは前にも何回か書いていますが、これはハイドロキシアパタイトはフッ素と繋がるともっと硬いフロロアパタイトというものになるからです。普通に市販されている歯磨き粉の中にはだいたい1100ppmぐらいの量でフッ素が入っています。象牙質とセメント質の中にはハイドロキシアパタイトの量が少ないので、歯根が出てきている場合にはもっと多くフッ素が入っている歯磨き粉を使い、出来るだけ多くのハイドロキシアパタイトをフロロアパタイトにするという事が理に通っています。研究データがあり、これによると5000ppmぐらいの量のフッ素の入った歯磨き粉は歯根の虫歯予防にとても効果があるという結果がでています。当医院には普通に市販されている歯磨き粉よりも4倍以上多くフッ素が入っている歯磨き粉がありますから、歯根が出てきてしまっていてそこの虫歯の予防に使いたいという方はお尋ね下さい。

歳をとっていくとやはり体にそれなりに衰えはありますが、いろいろな健康を保つ方法はありますし、また歳をとるとそれなりに経験を積み知恵も豊富になり得ます。若くても歳をとっても歯はとても大事ですから毎日の歯磨きとフロス、そして歯医者さんでの定期検診とクリーニングも是非して下さい。治療、検診、クリーニングのためにはお電話下さい。

 

 

 

 

 
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