差し歯  July 2013

日本人の方だと歯に付けてある人工の歯を普通に差し歯と呼んでいます。私はしかしこの"差し歯"という言葉はあまり好きではありません。差し歯というのは実際は歯の根を残しその根の神経をとりそして神経があったところに心棒のものを入れてその上に歯の形をした物を付ける治療です。つまり歯根にさしてあるという意味合いがあります。歯根だけですがまだ歯を残して治療をする最後の手段でこれが出来なければ歯を抜いて治療をすることになります。たまに患者さんに歯を抜いたらそこには差し歯をつける事になるのですかと聞かれることがありますが、実際は歯を抜いてそこの骨に埋めるものはインプラントであって差し歯ではありません。専門用語では差し歯は歯冠継続歯、英語ではPost Crownと呼ばれます。今回はこの差し歯について少し詳しく書きます。

普通虫歯が大きければ大きい程治療も大きくなります。自然の歯は一番体にあっているので出来れば削らないといけない量が少なくてすむ方が良いですし、治療にかかる時間や費用を考えても本当に虫歯は治療が必要だと解った時点で出来るだけ早めに治す事はとても理に適っています。それが出来ない事情がいろいろあり得る事は解りますが、虫歯は放っておけば大きくなってしまいある時点では神経を取る必要が出てきてしまいます。神経を取らないといけないところまで虫歯が進行している歯にはあまりにもダメージがあるためこの時点では歯に完全に被せるクラウンを歯につける必要性が普通出てきます。

しかしそうなってしまっても物理的には出来るだけまだ歯根の上つまり歯茎の上に残っている歯の量があればあるほど治療後の歯は頑丈です。もちろんあまりにも虫歯で歯が犯されていて歯根だけしか残せないという事はあり得ます。しかし、実際はそうなるとこの歯は抜くべきか否かという時点に至っています。歯根が残っていればそこに心棒をつけてそこに繋げて人工歯をつければ大丈夫なように思われがちですが、物理的には歯根に大きな負担を与えます。歯根は大部分は象牙質とセメント質というもので出来ていてエナメル質のように硬くありません。支えがあるようにそこに心棒を入れる事は必要性があればしないわけにはいきませんが、このさほど硬くない根に硬い心棒を入れると噛む力は心棒を通じて根にとても大きな力を加わえ根を割ってしまう恐れがあります。また割れなくても歯根にさしてあるだけなのでこの心棒とその上の歯は外れてしまう恐れがあります。しかし、歯茎の上に残っている本物の歯が多ければ多いほどそれだけ噛んだ時の力が根の中だけに伝わるのでなく歯茎の上の残った本物の歯にも伝わり、それだけ根が割れたり差し歯が取れたりという事を防ぐ事になります。従って、差し歯になるほど虫歯が進行していても出来るだけ早く治しておけばそれだけ本物の歯が残せるので差し歯もそれだけ長持ちします。

差し歯という言葉自体、歯根にさしてあるというイメージを連想させてしまいます。しかもこの根の中の心棒をわざと太くしたものを型をとって作る治療法があります。なぜか私はこの方法で太い心棒をいれてある"差し歯"を日本で治療をされた方の歯に多く診ます。心棒が太ければこの差し歯は頑丈だろうと思いがちですが、実際は歯の根の量をわざわざ少なくしてそこに太く硬いものを入れてしまうと歯根を弱くししかもそこにかかる負担を多くしてしまうので割れてしまう可能性を高くしてしまいます。通常この心棒は確かに歯根の上に付けるクラウンを支えるためには必要ですが、本物の歯を出来るだけ残し、しかし心棒もあるというようにするためには細い心棒をつける事が物理的に正しいと今は解っています。従って細い心棒と繋げて歯をある程度埋め、その上にクラウンを作って付けるという治療方法が物理的には主流であるべきです。そしてこの治療は歯根にさして人口の歯を付けるという方法とちょっとイメージが違います。太い心棒を使う治療は昔からしている方法をそのまま続けてしてしまっているとか保険で使える方法がこうだとかいう理由でされているのではないかと思いますが、私はどうもこの"差し歯"という言葉を良く思いません。実際は差し歯という言葉はクラウンすなわち被せ物だけを示す時にも使われていて、クラウンは神経を取ってそこに心棒をいれなくても出来る治療なので厳密には差し歯では無いのですが、おおまかには皆歯につけてある人工の歯も差し歯と呼ばれてもいます。

あまり"差し歯"という言葉にこだわってもしょうがないですが、本当に虫歯は出来る限り非常に大きくなる前に治して下さい。物理的に理に適っています。そして治療をした際も良い治療であった事を私は願います。というのは、もし前の治療が良くないと、実際は治っているのではないですし、次に治すのが難しくなりもっと歯を削る事になってしまうからです。大部分歯の治療の良し悪しは患者さんには解らない!? October 2012 をホームページでお読み下さい。虫歯、また歯槽膿漏は早期発見、早期治療、そして予防が歯の健康には一番です。検診、治療のためには是非お電話下さい。

 

 

 

 

 
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