酸蝕症(さんしょくしょう/acid erosion) August 2009


口内で虫歯が作る酸以外の酸が歯を溶かしてしまう現象を酸蝕症といいます。一番の原因は果汁(オレンジジュース等)、ソーダ、スポーツドリンク、ワインなどの飲料物の取りすぎにあります。また、逆流性食道炎、拒食症などによる胃酸による場合もあります。液体のpHが7であるとその液体は中性でそれ以下のpH数値は低ければ低いほどもっとその液体が酸性である事を皆さんも化学のクラスで習っていると思います。歯が溶け出すpHはだいたい5.5ぐらいで、オレンジジュース、コーラ、スポーツ飲料、ワインなどのpHは2.1~3.8の間にあり、歯を溶かして当たり前の酸度でもあります。しかし歯はとても硬いので、これらの物を飲んだら歯がすぐに溶けて無くなってしまうわけではないですし、唾液が酸を中和してくれます。ですが、微量に歯を溶かすのも事実です。前のニュースレターでも述べましたが、食事の際にはバイキンが酸を出し、その酸が微量に歯の表面を溶かし、そして唾液とその中の成分によりまた歯の表面は硬くなるという脱灰と再石灰化という事が起こります。同じ事が酸性の飲料物でも起こるのですがただ酸が虫歯菌からでないわけです。そして歯を硬くする再石灰化がその逆の脱灰についていけなくなると虫歯や酸蝕症になります。虫歯はバイキンが付着している所にダメージを与えるのですが、酸性の飲料物の場合は歯全体にダメージを与えます。また、虫歯の場合はバイキンの酸が穴を開け、その穴の中でバイキンがもっと穴を大きくしていきます。酸蝕症では歯の表面から全体的に歯を溶かしていきます。少しずつ時間をかけて起こるのですぐにはわからないのですが、なぜか歯がきれいにえぐれていたり、歯が薄くなったりしているのがいつのまにか見えてきます。もちろん、ある時期から変に歯がしみるとか、歯があまりにも薄くなって一番薄いところが割れるということが起こります。虫歯もあった場合はダメージが増してしまいます。

従って、気をつけて下さい。酸性の物を口に入れる回数が多ければ多いほど歯に悪いですし、また、口に含んでいる時間が長ければ長いほど歯にダメージを与えます。たとえば、コーラを1日のうちに何回か飲み、しかも飲む際には少しずつ時間をかけてしまうと、大きく歯にダメージをあたえます。もし、酸性の物を飲んだ場合、すぐその後に水を飲むか水ですすぐかをすると酸が薄れるのである程度の予防になります。実際はソーダやスポーツ飲料の変わりに水を飲むようにするのも良いのは確かです。果汁、そしてワインもやはり酸性ですので、適度に飲むようにして下さい。

もうひとつ気をつけていただきたい事があります。酸性の物を口にした場合、すぐに歯を磨く事は避けてください。つまり歯の表面が全体に微量ですが溶けてやわらかくなっている時にわざわざ歯の表面を削っている事になるからです。歯が脱灰しそして唾液により再石灰化するのには40分から1時間かかります。従って酸性の物を食べたり飲んだりした場合、だいたい1時間は歯を磨くのは待って下さい。

酸蝕症には直接な関係はありませんが、ここまで読んでみて、では、普通の食事の際も歯の表面で脱灰と再石灰化が起こっているのであれば同じに食後歯を磨くのは1時間待つべきではないかと考えられるかも知れません。実際に酸性の飲み物での実験結果はあり、それでは1時間は歯を磨くのは待つべきという結論が出されています。しかし食後に歯を磨くのに1時間待つべきか否かについては研究結果やデータはありませんし、また、何を食したかやどれだけ歯に虫歯菌が付いているかによって口内がどれだけ酸性になるかは変わります。今年の1月のニュースレターでも書きましたが、歯を磨く一番の理由は歯垢(つまりバイキン)を歯の表面から取ることですので、私は朝晩の歯磨きと1日に1回はフロスをする事を強く勧めています。確かに、それ以上に歯を磨くのは良いのですが、私自身は朝晩必ずフロスと歯磨きをしマウスリンスを使い、食後すぐにはフロスと水で口を濯ぐことまでしています。

酸蝕症は生活習慣病のひとつと考えられています。長い年月が経ってから症状が出てくるので普段の生活の中では忘れられがちの事柄ですが、歯の健康にとって大事な事ですので酸は微量でも歯を溶かすという事を覚えていて下さい。

 

 

 

 

 
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